NEWS

NEW YORK BUILT EXPO 訪問記

2023年3月8,9日にニューヨークで行われたNEW YORK BUILT EXPOに参加してきましたので、当日の様子をレポートします。

このイベントは年に一度ニューヨークで行われるアメリカでも最大規模を誇る建築・都市開発関連のイベントになります。会場には約350の展示ブースが出展しており、7つのカンファレンスコーナーが設置され、随所で活発な議論・情報共有が行われていました。トークディスカッションではNY市の都市開発局から民間インフラ・不動産開発・デザイナー・社会起業家・テクノロジストなど、業界を超えて都市開発・建築の新しい技術に関して川上での議論が行われていたのが印象的でした。

 

オフィスに行く意味を再定義する動きが活発化

中でもコロナで大きな影響を受けたオフィス(ワークプレイス)についての議論が活発に行われていました。ニューヨークはコロナで大きな被害を受け多数の死者を出した社会的背景があります。そのため、オフィスに公共交通を使って通勤すること自体がリスクを伴うもの(嫌悪を感じるもの)として捉えられ、コロナが落ち着いた今でもワーカーが以前のようにオフィスに戻ってこないという状態が続いているそうです。コロナの在宅期間中に家からでも仕事ができることが証明されたこともあり、

「会社がオフィスを構えて従業員を出社させる意味は何か?」

オフィスとそこでの働き方を再定義する動きが活発になっているように感じました。

 

コロナ前後でのオフィスの在り方の変化

コロナの前と後で大きく変わったと言えることは、オフィスは「単なる仕事をする場」から社風や企業文化を共有する「カルチャーコネクションの場」へ、オフィスで会う・議論するといった「フィジカルコネクションの場」から感情や場の雰囲気の共有を行う「エモーショナルコネクションの場」へ変化していっていると話されていたことが印象的でした。また、オンラインワークでは周囲のメンバーと気軽にディスカッションをしたり共同で何か作業をしたりする行為が難しく、コラボレーションやイノベーションを起こす意味での出社にシフトされつつあるそうです。さらに子どもがいる家庭では家は逆に仕事に集中しにくい環境である場合も多く、集中の場を求めてオフィスに出社するという意味合いも出てきているそうです。

今後オフィスに求められる柔軟性とは

そこで議論の中で盛んに出てきていた言葉が柔軟性=「フレキシビリティ」。在宅勤務・オフィス勤務どちらかに偏らせるのではなく、働く場所を仕事内容や事情によって自由に選ぶことができる環境を推奨。また会社側も働く人数や社員の働き方に応じてレイアウト変更がしやすい・オフィスの拡大縮小がしやすいといった箱物のフレキシビリティが今後は求められるだろうと議論されていました。

オフィスに求められるwell-being

最近日本でもよく耳にするようになった「well- being」という言葉。心身共に健康な状態で各人が自分らしくあるという意味で使われることが多いですが、このwell-beingは今後のオフィスにおいてより重要な観点になってくると皆が口を揃えて議論されていたのも印象的でした。特に心理面は目で見て計測することができないので、アンケート調査等で従業員の心の状態を測っていく重要性について話されていました。また、オフィス環境が従業員のwell-beingに与えるものも大きく、例えばウォーターサーバーの設置は健康面でのwell-beingでもありながら、井戸端会議のように飲み物がある場に自然と人が集まり繋がりが生まれる心理面でのwell-beingにも繋がります。今後はオフィス環境と働く人の心理面の2つの方向からwell-beingを実現させるオフィスづくりが求められそうです。

 

今回のコロナのような大きな変化は世界で同時に起こり、ニューヨークがこの議論の先駆けになっているということはなく、日本も含め世界全体でどういうオフィスの在り方がベストなのかというのを模索している状況に感じました。今後はワークパスでもオフィス環境と働く人の心理面の両面でwell-beingが実現できるオフィスづくりに取り組んでいきたいと思います。